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Cross world. / 始末屋さん2

「実は折り入ってお願いがあるのですが…」
ウチの顔を目にするや、挨拶なしで開口一番そう言ってきよった。
ウチの名前は東雲朝美(しののめあさみ)24歳。残念な事に独身や。
実は今回で3回目の登場や。これはもう立派なレギュラーと言うても過言やないで?ま、それは別にええねん。
問題はウチの目の前におるコイツや。前に一緒に仕事をした麗しの殺人マシーンこと、組織の工作員エストや。アレから仲よーなってたまに遊びに来るようになっとったんやけど、礼儀正しいコイツが不躾に頼み事をするっちゅー事は・・・。
溜息一つ吐いてエストを招き入れようとすると、エストの後ろからひょっこり顔を覗かせたんは黒いドレスを着た、赤く長い髪の少女やった。
「ふぅ…また厄介事かいな…」
吐いた溜息の圧力で瓦の2,3枚は割れるんやないかと思う程重かった。

「んで?そのお子様は何や?今度はどこん組織から拉致って来たんや?」
「あ、いえ…別に今回は拉致してきた訳ではなく…」
エストには珍しく、どっか歯切れの悪い口ぶりに、ちょっとイラついてまうわ。
「何や?その辺の路地に捨ててあったんを、仔猫か何か拾って来るん感覚で連れて来たんちゃうやろな!?」
ウチがビッ!と人差し指を向けると、申し訳無さそうに目を背け、脂汗を滲ませて萎縮しよった。まさか、図星やったん?
「まぁ、早い話がそう言う訳なのよ♪くす」
エストに向けられた指に、赤い髪のお子様が言葉を重ねてきた。
「大体お前は何や!?どこの脱走奴隷や?それとも迷子の旅行者かいな!?ふーあーゆー?」
エストの図星を突いた指を、そのままお子様に向けて捲くし立ててみた。あかん。混乱してきたわ・・・。
「私は旅行者でも現地人でもないわ。トルコから移住で来たのょ。それに、こう見えても私は26歳よ♪」
まぢかぁぁぁぁっぁぁぁっ!!??
どう見ても、どの角度から見ても12、3歳にしか見えない未発達な体型と童顔は、26歳では絶対に通用せんやろっ!?
「だ、だれがソンナでまかセ信じるもんでっか!?」
「はいっ、証拠♪」
そう言ってパスポートを差し出したのを引っ手繰ると中身を確認した。
シビエナ・トレンティー(26)国籍トルコ。写真も目の前におる本人や…。
あわわわわわわぁ…ヤック、デカルチャァァァァァー!!
こ、こんなに若いのにウチよりも年上て…。未知の異星人文化と遭遇した衝撃でパスポートを取り落とした。
「大抵の人はまぁ、そんな反応ね。でも私だってアンタ達のようなグラマーな体型を望んでるのよぅ?」
あんたは知らない。この完熟果実はもう青く実らへんのよ?維持するのが精一杯になるんがそんなにええんか?
「で、話の続きだけど、ここ『欲望の国』に来てみたは良いけど、私は伝手も何もない状態なのよね。ここに暫く置いてくれないかしら?」
「ヤなこった!!」
ウチの即答にエストが潤んだ目で意外そうな反応を見せた。
あうあう言ぅて何か…仔猫拾ってきた子供みたいで可愛い。ウチの目にはエストがデフォルメされて見えとるで。
「どこの馬とも知れんもん置いといたら、ウチの財産みんな盗られてまうやろ!アンタがどこの誰やろうとお断りや!」
「私、プログラマーなんだ♪パソコン使うの得意なんだょ。役に立つと思わない?ブログ作ってあげるからさ」
「お断りや!大体ブログ立ち上げても長期間放置したりするんがオチや。ほんで済崩しに消滅するんや」
自分で言って心を突き刺す痛みが走るのは、きっと気のせいや。
「じゃあさ、誰か知り合いでも紹介してくれない?ユーロでだけど、お礼はするからさー」
んぐぐ、最近仕事が暇で飲んでばかりだったから、少しでも酒代が欲しいところではある。正直組織の子飼いにするには身元が不明すぎる。あ、だからエストが組織に連れて行かなかったのか…わたくし事やもんなぁ。
ウチの知り合いっちゅーたら、フィリピンパブの飲み友達んトコしか思い当たらんなぁ。冨士囲のおっちゃんトコのあんちゃんに押し付けたろかな?
あのあんちゃんロリコンの気がありそうやからなぁ。
「ん、思い当たる節があるさかい、酒代奢ってくれるんやったら紹介してみたるで?会わせるんはしたるけど交渉はアンタがするんやで?それと小遣い忘れなんなや?」
始終あぅあぅしているエストを放置してとりあえずの話は済んだ。

 ウチらはオンボロのピックアックトラックで町の道路を爆走しとる。
エストはともかくとして、シビエナはコーナーを曲がる度に右へ左へと車内を跳ね回り、直線では目を見開いて顎をカタカタ鳴らしシートベルトにしがみ付いとる。失礼なやっちゃな。ウチかて最初に注意しとるし、気は使っとんねや。
 まぁ、人生は色々あるわなぁ。パブに到着するなり、シビエナは側溝にリバースしとるんは、彼女なりの愛嬌やと思うことにするわ。
エストが背中をさすってるあたり、親子に見えてしまうわ。
「やぁ、朝美さん。こんばんは」
「おお、あんちゃん。よう着いたん分かったな?」
「そりゃあまぁ…」
辺りにもうもうと立ち上る土埃と地面に刻まれた4筋のタイヤ痕を見れば、どれ程の音が近隣の空気を振動させたんかは明白や。
コレはコレでウチの愛嬌や。
「そう言えば聞いたで。娼館出来たんやってな?おめでとさんや♪今日は開店祝賀パーティーやっ!祝い酒飲むでぇ~」
「あ、開店祝いのパーティーはこの間やったばっかりだ」
はしゃぐウチにアンちゃんは冷静なツッコミを入れてきよった。
「えええええ~~~!?ウチは呼ばれてへんでぇ?それはあんまりやないかぁ?」
「この間は乱交もあったからマスターが気を利かせたんじゃないか?」
「そんなんかまへんのに…タダ酒飲めるチャンスがぁ…」
ウチがしょぼくれとると、吐くだけ吐いて少し楽になったのか、エストがシビエナを連れて戻ってきた。
あんちゃんはシビエナの惨状を見て取ると、同情でもするかの様に目元が引き攣っとる。
「そうや。この女をあんちゃんに紹介しよ思て連れて来たんやった」
「は?この娘は朝美さんの奴隷?ウチで使い潰していいのか?」
「あああ、ちゃうちゃう。移住でココ来たんはええけど、宿無しの根無し草なんやて。暫く面倒みたってくれんか?」
ざっと掻い摘んで説明がてら、あんちゃんの持っとったジンロの瓶を奪ってラッパ飲みした。間接キスとか中学生みたいな事は微塵も思わん。そんな純情ちゃうねん。
「ってもなぁ…俺も奴隷を3人も抱えているしなぁ…客が入らなきゃ商売も続けられなくなっちまう。ウチに居る以上は客引きでもして働いて貰わないとな」
あんちゃんはボリボリ頭を掻いて本気で悩んでくれているみたいや。ま、ちょっと前のあんちゃんと同じ境遇やし、無理ないかもしれへん。
「お客の呼び込みをすれば暫く置いてくれるの?」
何とか車酔いから復活して話せる位まで落ち着いたらしい。ちゅー事は…
「じゃ、後は当人同士で話しや~。ウチ飲んでくるわ~。アンちゃん!その娘は子供の皮を被った大人やで~。おっちゃん日本酒よろしく!」

っておい!紹介だけしといてさっさと投げるなよ!訳分からないぞ!
「で、客の呼び込みなんて本当に出来るのか?一歩間違えば連れて来る途中で、お前がレイプされかねない矢面なんだが?」
少女の姿をした女は自信満々に口角を吊り上げた。
「そんなの簡単よ。インターネットで広告を打てばいいのよ。あっと言う間に満員御礼間違いなしよ。私、パソコン得意だからインターネットの環境さえあれば簡単にやってあげるわ」
確かにインターネットで広告を打てば全世界から客が訪れるだろう。秘密ツアーも組まれるかも知れない。これは乗ってみる価値はあるかもしれない。
「分かった。暫くお前を置いておく事にする。その代わり、広報情報関係で働いて貰うからな」
こうして彼女に経営の一旦を任せる事になった。

「なぁ?あんた、なんでこの国に来たんだ?訳があるんだろ?」
一通りの自己紹介を済ませてから、パブで酒を酌み交わしつつシビエナに聞いてみた。朝美さんは勘定無視で飲みまくり上機嫌だ。
シビエナのパスポートを見た時は、つい不覚にも『デカルチャー!』と叫んでしまった経緯は省く。
「まぁね。国内でちょっとお尋ね者になちゃって、エジプトまで陸路移動して、そっからこの国に流れ着いちゃったのよ。国際指名手配じゃないから簡単に来られたわ」
「ま、ある意味切迫してたんだな。で、何やったんだ?」
「銀行の帳簿を改竄したの。ハッキングでね」
「そんな事も出来んの?頭良いんだなぁ」
「ふふん。私の有能さが分かった?貴重な人材を手に入れて貴方はラッキーね」
ふんぞり返るシビエナを見ていると、どうしても子供に見えてしまう。真白よりも年下に見えて、俺より年上だなんて魔法みたいな光景だ。
「インターネットの環境は今の所は無かったけど、明日手配しておくよ。日本で使っていた端末だけどラップトップが1つあるから、デスクトップを入れるまでの間はそれを使ってくれ」
「ま、その辺の設備投資は任せるわ…。それより、この国って人殺ししても罪になんないんでしょ?」
「利権、縄張り、賠償、仇討ち何でもござれさ。民事では捕まりはしないが後処理が法治国家より面倒だ。最低限自分の身は自分で守ってくれよ」
「奴隷なら殺してもいいんでしょ?」
「所有者の同意があればな…って、まさかソレも目当てか?」
「BINGO!だって一方的に致傷殺害なんて出来るとこってこの国位でしょ?」
うっとりと妄想にふけ込み始めるシビエラに一応釘を刺しておく。
「先に言っとくが、ウチの商品を勝手に潰すなよ?」
「買えば何しても良いんでしょ?」
ふふんと鼻を鳴らすシビエラ。これはもう買う気で居やがるな。
「まぁな、客扱いで原価の7掛でいいぞ」
「気に入った娘が居れば、その時に値交渉しましょう。で、こんな時間からもう店仕舞い?」
「一応営業中さ。出来たばかりでまだ客が一人も入っていないから、ココで営業兼ねて飲んでるのさ。店はココの向かいに見える路地の袋小路だから客が来れば分かるのさ」
グビッとグラスに注いだジンロを飲み干した。
「ふぅん…寝る所はあるの?」
「暫くは商品と雑魚寝かな」
「…奴隷扱いしないでちょうだい」
ぷうっと頬を膨らませむくれて見せるあたりは子供にしか見えないな…。
「それならあなたと同じベッドで寝た方がマシよ!」
「マジかよ!?貞操の保障はしないぞ」
「構やしないわ。セックスは好きな方だから寧ろ歓迎よ♪」
ジャパニーズジョークの通じない奴だな。鼻笑いもせずに真に受けやがった。それに格差に対する確執も根強いものがある様だ。シビエラだけに限った事かも知れないがまぁいっか。
とりあえずインターネットの環境を整えて、どどーんと宣伝広告だな。それとシビエラは事務室のソファーにでも寝てもらうか。
ああ、それと組の用心棒が常駐するって話だけど、まだ何の連絡も無い。確か朝美さんが組の傘下らしいって話は聞いたけど、ああ酔い潰れられたら聞きようもないからまた明日にしようか。

…翌日…

う…う、いつつぅ…。
頭…ぐぁんぐぁんする…。
飲みすぎた?やっぱり?間違いなくそうやねぇ…?
「あ、目が覚めましたか?」
凛としたいつものスーツ姿のエストが私の目前で、床にブチ撒けられた猛烈な異臭を放つ吐瀉物を涼しい顔で処理しとった。ん?ウチ下着姿やんか?ぅん?…あ!!…寝ゲロどころか寝小便までしてた!?いい年こいてこれは恥ずかしい…。
脱ぎ散らかした衣服と床のゲロ、ソファーを濡らすオシッコで部屋は正に惨状と言いえとった。酷い異臭が部屋に充満しとる。
「あ、あー…悪いね」
エストはニコっと微笑んで吐き散らかされたゲロをテキパキと片付けてゆく。
…ゲテモノOKのエストからすると『この程度』くらいの感覚なんやろか?
重い頭を揺らしてキッチンで水を一杯飲んでバスルームへ。
ブラだけ外して頭からぬる目のシャワーを浴び、汚れたショーツを脱ぎ捨てた。
そのままぼけーっと座ったまま、無心でシャワーをシャワシャワしてシャワーした。この辺あんま覚えてへん。

 リビングに戻ったらゲロとオシッコは綺麗に片付けられて雑巾と洗剤で綺麗に拭き掃除され、たった今終わったところみたいやった。
頭はまだ痛いけど随分楽になったし、お腹も空いた。
「エスト。色々おおきにな~」
「いえ…昨日はありがとう御座いました。」
「ん?」
「シビエナの事です」
「ああ。ええねん、ええねん♪厄介事を押し付けた上にタダ酒飲めたし、礼ならあんちゃんにゆうたって…(ゆうても殆ど記憶無いけど)」
いつも通りの事務的な返事やったけど、以前に比べると物腰が軽く感じた。
「了解いたしました。そのミスターフジイから言伝です。どうぞ」
そう言ってエストは紙切れを差し出した。
紙にはあんちゃんの電話番号が書かれとる。電話せぇっちゅう事かいな。

「ハロー。あんちゃんか?なんやウチに用があったん?」
『朝美さんか、今頃起きたのかよ。』
「まぁ、いつもの事や。んで、用件は何や?死体処理の仕事かいな?開店そうそう客に商品潰されたんちゃうやろな?あひゃひゃひゃ」
『残念ながら閑古鳥だよ…ソレよりも、組織から用心棒が店に付くそうだけど、なんら音沙汰が無いんだよね。朝美さんって組織の一員なんだろ?何か聞いてないか?』
「一応そうゆう事んなってるけど、何も聞いてへんなぁ…エスト?あんちゃんの店の用心棒の話聞いてるか?」
「あ、はい。私が明朝から常駐する事になっています」
知っとるなら昨日の内に話しとけってこっちゃろ…。
「……あー…あんちゃん?」
「ん?分かった?」
「ああ、うん。ウチんとこのエストが明日から付くらしいわ」
『ほう、あの娘が?腕は立つのかい?』
「2、3人が相手なら一瞬でやっつけれると思うで。あんなでも組織中枢のパイプもっとるさかいな」
『そいつは凄いな。みかじめ料が高そうだなぁ…ん?そうでもないかな?要は俺の店は云わばモデルケースって所か。需要があればそういった事業展開を拡げていけるって思惑のデータ収集か?』
「そう考えるのが普通やろなぁ。しかも、あながち間違いでもないと思うで」
『分かった、ありがとうじゃあ…』
「ちょい待ちい!」
『なんだ?話は終わった筈だけど?』
「シビエラの事はどないなった?」
『彼女ならウチの店で雇用したよ。営業広告専任としてだけどね。だから今ネットの環境設備工事中なのさ』
「そう言えばプログラマーゆうてたなぁ。ふぅん、あんちゃんトコで面倒見て貰えるんなら安心や。頼むでぇ」
『役に立てなきゃ、さっさと捨てるけどな』
「本人がその条件で承諾しとんやろ?なら文句言わんやろ」
『そういうこと。じゃあ、また』
「ああ、おおきにな~」
電話を切ってからエストに向き直った。
「ご飯食いに行こか」

ちゅう訳でエストと外食に出かける事にした。
繁華街までは徒歩で十分な距離やから、プラプラと散歩がてらのんびり歩いていく。まぁ、割と普通の町並みや露店があり、立ち話する人々が居りーので変わり映えせえへん光景やな。
中華が食べたいなぁっと思ってると、中華飯店の向かいで騒動が起きたらしい。
こういう平和な時の騒動は相当目立つもんや。
野次馬根性全開で人込みを掻き分けて騒動の前面に位置どった。
ユーロ圏の白人男性と同じく白人の女性が対峙して口論をしてる。白人女性の後ろには浅黒い肌の奴隷が、女性の上から下まで黒い服を握り男から隠れている。奴隷の少女は17か8歳位の黒髪でインド系やと窺えた。
「エストはこの状況どう見る?」
「察するにあの黒服の白人女性に男性の所有する奴隷が助けを請い、倫理に駆られた白人女性は、奴隷を所有者の男性から取り上げようとして口論になっているのではないかと窺えます」
「ウチもそう思う。倫理的にはあのねえちゃんが正しいけど、あの奴隷は所有者のもんや。それを正義感で取り上げるのはお門違いやな」
女性が少しバツの悪そうな顔をした。どおやらウチ等の話が聞こえとったみたいや。大人しそうな顔に似合わず大胆な行動をする女やなぁ…。
「ねーちゃん。あんたがその男から奴隷を買い取るならその娘助けられるで~。残念やけどそれ以外に助ける方法は無いみたいやけどな」
男がズボンの後ろからゆっくり拳銃を抜くと、ねーちゃんは慌てて両手を上げて奴隷少女から飛び退いた。
ねーちゃんはうち等の居る方に下がると、残された奴隷少女は縋る者を失い、元の所有者へ土下座した。キャミソール一枚だけの少女はこちら側に向いたお尻を突き上げて低頭した格好や。因みに下着は穿いてへんから、こっち側の野次馬に丸見えや。
「ごめんなさい!許して下さい!ごめんなさい!許して下さい!ごめんなさい!許して下さい!ごめんなさい!許して下さい!ごめんなさい!許して下さい!ごめんなさい!許して下さい!ごめんなさい!許して下さい!…もう2度としませんからどうか許して下さいぃ!!」
頭を地面に擦り付けて必死に少女は謝った。
男は少女の頭に銃口を向けて引き金を引き絞った。ぱーん!という軽い銃声で少女の頭に風穴が開いた。少女の突き上がったお尻が着弾の衝撃でビクンと跳ねて、その後ぶるると痙攣しつつ放物線を描きオシッコを垂れ流した。
血と脳漿がジワジワと広がって地面の色を変えていった。
ウチはすかさず白人男性に歩み寄ってウチの名刺を手渡した。そして、今度は白人女性の腕を掴んで中華飯店に引っ張って入った。

「どこの国からやって来たお嬢様や?観光する国を間違えてるんちゃうか?」
席に座らせるなり白黒ねーちゃんをそう諌めた。
「あんな事をすれば、いきなり撃たれていても不思議ではなかったですよ?」
普段あまり喋りたがらないエストまで言葉を重ねてきた。
「あ、ええ…助けてくれてありがとう。貴女達は?」
狼狽しながらも先ずはお礼の言葉がでた様や。少しは冷静になったか?
「だたの通りすがりのお節介もんや」
…自分で言っといて何か釈然とせんのは何でやろ?
「訛り方からして貴女は日本人ですね。そちらはソ連系ですか?」
「別になんでもええねんけどな。アンタは何もんや?」
「私は西ドイツ人で、ヘレイア・バルクホルンと言います。22才で、一応今のところ旅行者です」
「今のところ?」
「ええ、私これでも無免許医でして、闇医者としてこの国でやっていけないか下見を兼ねてこの国に来ました。アウトローだらけで怖いですけど、ある程度の好き勝手できるのは魅力ですね」
正義感丸出しにしとったもんの言うセリフやあらへんで。ちゅうか、最近こんなんばっかやなぁ…。
冨士囲のあんちゃん。シビエナ。そして、このヘレイア・バルクホルン…。この国はそんなに魅力的なんか?
居たくて居るウチには分からんわ…。
「無免許医言うても、あんた腕は確かなんか?顔に皮膚移植された痕がないみたいやけど?」
「日本のコミックのキャラではありませんから…それに私、元々聖職者なんですよ」
聖職者から闇医者になる根拠がまったく理解でけへん。
「尚更、医者としての知識や技術に疑問を禁じえないんやけど?」
「私のする治療は心霊治療に近いんです…色々と経緯はあるんですが…」
ここに来て心霊治療とは胡散臭いことこの上ない。
病は気からとは言うけど、幾らなんでも限度があるやろ。
注文した料理がテーブルに並び、それを食べながら話をする。
「あの…私…お金持ってないんですが…」
申し訳無さそうにウチから視線を逸らし、腹の虫を鳴らすへレイナ。
「あるもん適当に摘んでくれたらええで」
そう促すと割り箸で唐揚げや春巻きを遠慮がちにつつきだす。
「しっかし、銭持ってへんのにあの子助けてどないするつもりやったん?」
「いえ、つい…勢いで…」
「あんたが難癖つけんかったらあの子殺されんかったでぇ…づるる~」
「そうでした…万人は自由であるべきと思っていますので…」
「その理屈は思想の押し付けやで。この国じゃあ簡単に人を殺し、殺されるんや、づる~…そのつもりで、余所さんには関わらんのが一番ええ。医者やる言うんやったら、その辺弁えな命が幾つあっても足らんで~」
「そうですよね・・・」
余程空腹だったんか、結構な速度で唐揚げと春巻きとシュウマイが無くなってく。エストは餃子オンリーの偏食みたいや。口臭が気にならんのか?
「銭無しはんはモーテル代も持ち合わせてへんの?」
「2、3日だけなら前回パートタイマーして稼いだお金があります切り詰めればもう少しだけ…」
話にならんような事を平気で言うてくれるなこの姉ちゃん。
ふっと視線を感じて見ると、エストがウチをじっと見つめとる・・・。
はっ!?・・・またか!またなんかぁー!?
「っ~~~~~~~~~」
エストが無垢な少女の様な目でウチを見つめる。
「~~~っかたわ!あんた、暫くウチに居ったらええ。部屋空いとるし、医者やりたいんやったら出張ですればええねん!最大の譲歩や、これならどうや!?」
エストの表情が『ぱぁぁぁあああ』と明るくなった。
「え?良いんですか?迷惑ではないですか?」
「嫌ならどっかで野垂れ死んでまえばええ」
「いえいえ!ご好意、ありがとうございます!!」
深々と頭を下げるヘレイア。
ったく、ウチこんなんばっかやわ~…とほほ…


つづく

※補足:作中ではソビエト連邦は崩壊せず、国土分けとしてロシア共和国を平定し、ドイツ革命も起こってはいま    せんので東西で別れています。
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編集しました!

唯一気がかりだった「始末家さん2」を編集しました。
結果最新になってしまいましたが、実質の最新は「新天地3」です。
とりあえず続け易い終わり方にしたので、どこかのCross world.に繋がって行きます。しかし、思えばろくに仕事してねぇなこの姉ちゃんw
プロフィール

シニガミ

Author:シニガミ
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